毎日毎日ぼくらはベッドの上

生涯で一度だけ(しかも前半だけ)しか聴いたことのない曲『泳げ!たいやきくん』をもじろうと思ったら意外と萌えてしまいましたおはようございます。今日も脳内はL月で一杯です。

確かにL月に愛とか生活とか捧げていますが、しかしあんまりにも毎日することもなくだらけているので、インスピレーションどころか萌えすら萎えてゆきそうなほどです。仕方無いのでハリー・ポッターでも読んでやろうかと思いますが分厚いので気が進まない……。
夢野久作の『ドグラ・マグラ』も購入してきたのでそれを読もうかとも思うのですが、やはりだれすぎていて気が進まない……。
読書にこんなに気が進まないのは流石アメリカ効果です。多分それに影響されるのは世界でも私くらいのものでしょう。

もう何を云っているか解りません。色々書こうとしているのですが進まなくてがっかりしているのです。気分転換したいんだけどこの家にはシャワーしかなくてお風呂に浸かれないんです……。日本人への拷問ですか。私には欧米的生活はエンジョイ出来ないとつくづく思います。

仕方が無いのでベッドの上でごろごろする竜崎と、いい加減捜査をしたいんだけれども竜崎が動かないことには自分も動けない月の話でも書いてやります。やまなしおちなしいみなしですが、さほどやおいっぽくもないつまり最悪。

『怠惰』

僕が目を覚ますと、既にカーテンの向こうでは太陽が昇りきって明るかった。昼間独特の遠くから放り投げるような陽光に照らされて僕は何をするより先に溜め息を吐いた。本来なら僕は大学に通っているはずだったのだ。それが、こうして何をするでもなく日々を無駄に過ごしている。それもこれもキラ逮捕のためなのだと竜崎は云うし、僕だって確かにそのためなら生活くらい幾ら差し出したって惜しくはない。だけどそうやって差し出された時間が全てこうして怠惰に過ごすためにしか使われないことに僕は強く不満を抱いていた。横を向くと、案の定竜崎が丸まって眠っていた。
僕と竜崎の手首はそれぞれ手錠で繋がれているので、僕達は行動を共にするだけではなく寝室も共有している。あまり相手に負担が掛からないように用意された、かなり大きいサイズのベッドはスプリングが適度に利いて柔らかい。どうやらまだ当分起きそうにない竜崎の様子を確かめてから、僕は再びベッドに身体を預けた。敢えて枕許に置いた腕時計は身に付けない。時間などを確認してしまったが最後、時間ばかりが気になってしまって、こうしてごろごろすることは僕にとって苦痛でしかなくなる。
竜崎は死んだように動かない。僕はすることもないので、いつものように天井を眺めたり手をかざしてみたり、あるいはシーツの皺を伸ばしてみたり、とにかくそういった無駄なことをしながら気を紛らしていた。僕としては一刻も早くキラ捜査の続きをしたい、竜崎がそれこそ無駄だという顔で僕が諦めるのを待つばかりだとしても。だが竜崎が起きて一緒に部屋を移動してくれないことには僕もどうする訳にもいかないし、無理に起こすと逆に竜崎が酷く機嫌を損ねるので閉口する。前回我慢がならなくなって竜崎を揺すり起こしてみたところ、不機嫌な顔をした竜崎が「今日は一歩も寝室からは動きません」と宣言した挙句実際にそれを実行して見せた。僕は幾ら何でも困ってしまって、それでまたひとしきり喧嘩をした。
僕はかなり長い間竜崎が目を覚ますのを待っていたが、結局待ちくたびれて小声で竜崎を呼んでみた。
「竜崎……竜崎」
何度か呼んでみたが、返答はない。しばらく小声で呼び続けると、やがて竜崎が少し身じろいで、「何ですか」と不愉快そうに低い声を返した。
「竜崎、そろそろ起きないか」
「起きて何をするんです。私はまだ空腹ではありません」
「そうじゃないだろう」
僕は眉を顰めて竜崎の丸まった背中を見た。
「お前は食べることと寝ることしか考えてないのか。キラ捜査を続けないといけないだろう」
「……そんなもの時間と労力の無駄です」
「竜崎!」
思わず軽く声を荒げると、竜崎がひとつ溜め息を吐いてからいかにも大儀そうにこちらを向いた。じっとりと竜崎の死んだような目が向けられる。
「することが無いんですか」
「キラを捕まえるので忙しいよ」
「そうではなく、ここで出来る事はないんですか。私は動きたくありません」
「寝室でキラ捜査が出来るはずがないだろう」
「……捜査以外の選択肢は無いんですか」
「だったら運動でもすればいいじゃないか、お前には必要そうだ……ほら、いい加減起きろよ。何時だと思ってるんだ」
竜崎は唇に親指を押し当てると数秒黙っていたが、すぐに視線をくいと僕に向けた。
「暇で、運動不足で、苛々しているんですね。だったら自慰でもしたらどうですか。解消されますよ。私は見ない振りをして差し上げますので、ごゆっくりどうぞ」
「な、」
僕が何か言葉を発するより早く、竜崎はくるりとこちらに背を向けて「では私はもうひと眠りします」と宣言して丸まってしまった。
僕はしばらく込み上げる殺意を抑えながら竜崎の骨ばった背中や寝癖のついた髪を睨んだ。僕が拳を固めるのはその3秒後、その日の午後は結局喧嘩に費やされた。