凄く酷いものが書きたくなった

心の繊細な方は読まないほうがいいよ!

『独りえっち』

 荒い息を吐きながら月は虚空を見据える。手は忙しなく動き、粘液でねばついた音を立てている。
 不意にベッドサイドに置かれた携帯電話が着信音と共に振動を始めた。聴こえない振りで天井を睨むことにも限界があり、磨き上げられたサイドテーブルでがたがたと騒音を立てる携帯電話を月は眉を顰めて手に取った。ぱちん。
「なに竜崎。……んっ、今忙しいんだけど……はぁっ、は」
 電話の向こうの反応はおおむね月の予想通りだった。月はちいさく笑って目を閉じる。神経は聴覚と触覚にだけ集中している。ねばついた水音が規則的に続く。
「……ああ、りゅうざきのこと考えてるよ……ん、あ、あ!」
 いったんですか。訊かれて月も微笑んだ。うん、竜崎のこと考えてたらいっちゃった。すごくきもちよかった。それで相手も興奮したようだった。月が目を開く。規則的に揺らぐ視界。ああなんてきもちがいい。
「んう……ごめん、今夜は家族で食事の約束が……っふ、んん……うん、じゃあまた……」
 ぱちん。月は携帯電話を放り出し、笑顔で目の前の男の首に腕を回して引き寄せる。数回の軽いキス。一度だけディープ。
「ふふっ、あんなの嘘に決まってますよ……ね、今の電話で興奮した?……」
 媚びた笑みで月は腰を揺すった。きもちいい。すごく。すごく。

 後姿を送り出し、部屋の窓から一度手を振ってやればするべきことは終わった。さて。月はシャワーを済ませて未だに湿った髪を指で梳きながら携帯電話を手に取る。
「もしもし、竜崎?……予定キャンセルしたんだけど、今から会わないか?」