いつものキス

たまには脳天気に。また古いメモを発掘しました。

『いつものキス』

「月くんはキラです……」
 いつものキスの後、竜崎に恨みがましい目で見つめられて僕は溜息を吐く。
「なんでそうなるんだ。証拠もなしに」
「証拠ならあります」
「はは、まさか」
「ありますよ」
「……何が証拠だって云うんだ」
「月くんはすぐ私に死ねと云います」
「それがどうした」
「事あるごとに死ね死ねと何度も」
「ああだがそれは証拠にはならないだろう」
「あれだけ私を殺したがっていてキラでないはずがありません」
 ……これは要するにキスだけじゃ足りなくてもっと構って欲しいのだろうと思う。優しく宥めて欲しいんだろうけど、そう素直に乗ってやるか。お前の出方次第だよ、竜崎。
「それはそうだろう、好き勝手に人にのしかかるし、鳥肌ものの台詞を吐くし。それで始終疑われたんじゃ殺意だってわくよ」
 やられた失敗した最後の一言は余計だったこれじゃ僕が竜崎を嫌っている訳じゃなくて疑われていることだけが不快なんだと認めたことに、……ああキスする度に僕は馬鹿になっている!
「えっそれは私の好意を受け入れてくれていないということなんですか!」
「もっと早く気付けー!」
 解ってない。全然解ってない。たった今のキスを何だと思ってるんだ。むかついたので僕は遠慮なく竜崎に向かって拳を振り上げた、いつものキスといつもの風景。