PC無いって不便

PCが壊れたとか壊したとかそーゆー話はよく聞いたことがありますが、それが自分の身に降りかかってくるとは万にひとつも思わなかったな。
じっさいのところ冗談にもできないほど不便です。小説書きたいのにPCがないとカケナイヨー手書きツライヨー

以下福永とか実篤とかそういう人の文体を意識した気がするL月。今書いた。
『夕立』

 月と竜崎は都内にある大学に通っている。
 二人は同時に主席入学したと云う変り種同士だったが考え方はあまり似ていなかった。月の方は生まれも育ちもそこそこ良い方で、あまり苦労をしたことのないたちだったが、竜崎は一般生徒と比べても随分毛並みが違っていた。そのため最初のうち二人には何かと衝突が絶えなかったが、他愛のない喧嘩を続けることはじゃれ合うことと同じようなもので、そのうち段々仲がよくなってきた。
 二人が一緒に話す頻度は高くなり、お互いに強く好意を抱くようになった。
「僕がお前を好きだって云ったらどうする」
 ある日月がそんなようなことを云った。
 二人は授業を済ませて歩いているところだった。夏になりかかった頃で、暑いほどに晴れていたが、どうやら夕方には夕立が掠めてゆきそうだった。月は空を眺めながら不意にその言葉を呟いたので、竜崎はほとんどそれを聞き逃すところだった。
「どうしてそんなことを云うんですか」
 竜崎はごく落ち着いた様子で尋ねた。
 月の歩みはぐっと速度を落とした。月はあまりにも自分の竜崎に対する気持ちがむくわれていないように感じていたので、それでそんな言葉が口をついて出たのだった。
 月は不自然ではない程度に顔をそらしていて、だから竜崎には彼の表情が見えていない。
「夜神くん」
 月は黙ってゆっくりと歩いていたがとうとう立ち止まった。顔をそらしたままだったが一層苦しげにうつむいた。
 二人はしばらく黙っていた。月も、竜崎も何も云わなかった。
「夜神くん」
 もう一度竜崎が声を掛けた。月はびくりと肩を震わせると、竜崎から目をそらしたまま吐き捨てるように「僕には付き合っている人がいるんだ」と云った。月はその相手を好きでも嫌いでもなかった。ただ竜崎のことばかり考えてしまう気晴らしにしていた。
「それは誰ですか」
「先輩」
 こたえながら、月は遊びでも他の人間に心を移そうとしてしまったことに苦しんでいた。竜崎さえ望んでくれればただ竜崎だけを思いたかったが、おそれが月の心を折っていた。
「そうですか」
「だからさっきのは冗談だよ。ちょっと自慢したくなっただけ」
 月は意地のわるい笑みを浮かべて今度は竜崎の顔を覗き込んだ。苦しみを抑えたそれは勝ち誇ったような表情だった。その笑みは奇妙に歪んでいて、竜崎はいやな気持ちになって黙っていた。
 竜崎には月と自分以外の誰かとの幸福をただのぞみたいとは到底考えられなかった。竜崎は月がたった今名前を挙げた先輩をつよく憎んだ。だが月の苦しい思いを察することができないまま竜崎は「そうですか」とだけ繰り返した。それで二人はその場で別れてそれぞれ帰宅した。
 折からの夕立は思いのほか激しく、二人は冷たく苦い雨に濡れた。