呼吸ラスト

『呼吸の作法』ラストです。去年完結させるの忘れてました(……)。

 暫くお互いに無言でいると、竜崎の行動に何を思ったのか、唐突に月が彼の首に腕を回して引き寄せた。自然、引かれるまま竜崎が月の上に折り重なる。
「重いな、竜崎」
「……夜神くんが引っ張ったんですよ」
「そうだね」
 云って、月はおかしそうに笑いはじめた。竜崎は月の上に覆い被さったまま憮然とした表情を浮かべ、それに月が尚更楽しげに笑う。
「竜崎が始めたんだよ」
 くつくつと笑い続ける月の振動が伝わって竜崎の体も揺れる。そうしながら竜崎は月が取り繕わない笑顔を浮かべていることに気付いた。とりとめのない事柄に笑う月は年相応に見える。竜崎は何故か深く安堵した。
「格闘したら疲れました」
 うそぶいて竜崎は月の上に乗ったまま目を閉じた。月の手がそっと竜崎を撫でて、二人は少しの間そうやって休息した。安らぎはどこにでも転がっていた。